うわべだけでは終わらせない
軍モノを街着に昇華した一本

一見、今どきな作りのワイドパンツ。わたりから裾までドカッと太いイージーシルエットに、大ぶりなカモ柄が配されたニュアンシーなピンクカラーなど、どこから見ても気が利いたファッションアイテムであり、厚すぎない張りのある生地感は季節を問わず活躍してくれそうだ。しかし、〈KAPTAIN SUNSHINE〉のデザイナー、児島晋輔氏が生み出した「WIDE OVER PANTS」の魅力は、それだけではない。〈KAPTAIN SUNSHINE〉は、往年のアメカジやトラッド、ミリタリー、ワークウェアなどに最大限のリスペクトを持ちながら現代的に再解釈し、上質な素材と日本の確かな縫製技術で毎日使える日常着を提案するブランド。「WIDE OVER PANTS」は、そんなブランドの真骨頂と言える一本だ。先述の通り、一見今どきのワイドパンツ。しかし、その原型は軍隊で用いられる、汚れや傷から服や装備を守るために戦闘服の上から重ね穿きする“オーバーパンツ”にあり、リアルな軍モノで取り入れられている強靭なリップストップ生地に、フラップ付きのポケット、重ねて穿いても脚の曲げ伸ばしを邪魔しない膝のタック、足元からの汚れや風の侵入を防ぐために裾を絞るドローコードなど、ミリタリーパンツのディテールが忠実に再現されている。そんな本気のミリタリーへのオマージュアイテムを、最高品質のエジプト超長綿の細番手素材や、程良いヴィンテージ感を生む洗い加工などを用いることによって、しっかりと現代の街着に昇華している。どことなく惹きつけられる引力の源は、上っ面だけの軍モノではない、背後に潜ませたこだわりの厚みによるものなのだ。