ファッションの“塩胡椒”に
歴史あるフレンチワークウェアを

その土地土地の産業史を背景に、世界の多くの国に存在するワークウェアブランド。アメリカ、イギリスなども有名なブランドを多く抱えるが、中でも最も進化していると言って良いのは、フランスかもしれない。作業服や機能服から始まり、その枠から飛び出たデザインや色使いをワールドワイドで展開する作業着出自のブランドが、フランスには数多く存在するのだ。産業の歴史が古く、農・工業の幅も広い。また貴族の時代からファッションの最先端を走っていたという歴史が、ワークウェアも早くからファッションピースとして離陸させたのだろう。〈VETRA〉も、そんなフランスのファッション的エスプリを十分に讃えたワークウェアブランド。1927年にパリで創業し多くの作業現場で重宝され、大戦時にはフランス軍にも採用されており、世界の一流デザイナーたちがデザインの参考にしたという。さまざまな現場で磨かれた素材や技術が、今でもフランス国内の職人の手によって活かされている。こちらの「TIELOCKEN JACKET」は、軍用のアイテムとして開発されたタイロッケンコートがネタ元。ボタンやジップなどの留め具が主流の現在で、ベルトのみで固定するデザインは逆に新鮮で、それをミドル丈のジャケットとして、アンコンの綿の撚り杢シャンブレー生地で仕上げているあたりが、ワークウェアをベースにしながら、しっかりとファッションウェアに進化させているフランスブランドらしさ。実はこの撚り杢シャンブレー生地、通称「SALT&PEPPER生地」とも呼ばれる。コーディネイトの最後の“塩胡椒”として、ピッタリなアイテムである。