2022年11月、日本の“風流踊(ふりゅうおどり)”がユネスコ無形文化遺産に登録された。“風流踊(ふりゅうおどり)”とは、華やか、人目を引く、という日本古来の“風流”の精神を体現し、衣装や持ち物に趣向を凝らして歌や笛、太鼓といった囃子に合わせて踊る民俗芸能のこと。分かりやすいところでいえば、盆踊りもその類いである。日本ではこれまでに、能楽、歌舞伎、和紙、和食などが認定されてきた。そんな世界に認められ、後世に受け継がれようとするものもあれば、同様に社会的、歴史的価値をもちながら消え去ろうとしているものもある。例えば、埼玉県越谷市に伝わる藍染め技術、「籠染め」。この上なく精巧な模様をあしらった真鍮製の二本の円柱筒を使い染め上げる独特な技法は、これまで浴衣などに使われ親しまれてきた。タイダイ調に美しく染められた〈COOHEM〉のこのニットにも、その技法は使用されている。花をモチーフにした楽しい編み柄もさることながら、やはり目を引くのは花が美しく咲き誇っているかのように見せるこの彩り。一点、一点、その色味は異なり、独特なマダラ模様が実に華やか。手染めならではの優しい風合いもまた、ニットのふっくらとしたタッチと相まっていっそう温かな気持ちにさせてくれる。こんな素敵な表情を描き出す貴重な染色技術も、今や消滅の危機に。できることならより多くの人に袖を通してもらい、一朝一夕では会得し得ないこの技の素晴らしさを知ってもらいたいと思うのだ。