様々な想いが蘇る
清々しいモヘアのカーディガン

とある音楽ジャーナリストいわく、‘90年代の音楽の素晴らしさは、誰もがロッカーにもモッドにもなることができ、HIPHOPの探求者にも、R&Bファンにもカントリーファンにもなり得たことだという。確かにその通りではないだろうか。ポップ・ミュージックとは何かという定義づけに躊躇するほど多様性に満ち、あらゆるものをないまぜにし表現していた時代。その中で登場したのがグランジだ。ある種のカウンターカルチャーという位置付けにとどまらず、むしろノーマル化していった事実に、存在の大きさ、重要性が見て取れる。旗手としてあげられるのがカート・コバーン率いるニルヴァーナだろう。彼らはヨレヨレのTシャツやチェックシャツ、ボロボロのモヘアのカーディガンに身を包み、ダメージジーンズを穿きながら世の中への鬱屈をシャウトしギターをかきならした。そして音楽だけでなく着こなしにも注目が集まったことから、モヘアのカーディガンに当時の思い出を重ねる人もいるかもしれない。ただ、ニードルズのこちらがお見事といえるのは、今の気分にもしっかり寄り添っていることだ。クラシックなアーガイル柄を纏ってはいても、鮮やかなカラーリングで料理したことでモダンな印象。ブルー系統でまとめているため、老若関係なく着こなしへも取り入れやすく、モヘアならではのふっくらとした優しい肌触りはきっと心を穏やかにしてくれる。混沌とした時代だからこそ、今は、こんな晴れ晴れとした一着に袖を通したいものだ。