あのデザイナーも魅了した素材の威力を存分に

国内のDCブームを牽引したひとりであるファッションデザイナー、金子功さんはとある雑誌のコラムでカシミアについてこのように述べている。「全身を高価な品で飾らなくてもいい。いろいろ技巧を凝らさなくてもいい。１枚だけ、上等のカシミアのセーターがあれば…」。彼が真っ先に挙げた魅力が肌ざわりと着心地だ。ゆえにシンプルに着て気持ちがいいことから、それを存分に堪能するなら複雑なデザインや模様などは必要ないと説いている。さらに、「精神のゆとり」を我々にもたらしてくれると語り、偉い人に会う、みんなが豪華な服を着ている席に行く、相手はセンスのいい女だ、といったもろもろの場合にも、特別なドレスなど着ずとも何にでも対抗できるという。長らくシーンを牽引してきた国内屈指のファッションデザイナーの言葉は、やはり重みが違う。こちらのブルゾンは、そんな頼り甲斐のある素材を惜しげもなく使用している。それはこのボリュームからも分かってもらえるだろう。とことん、素材の魅力を味わってほしいため、ハイネックの襟型やダブルジップ仕様といったデザイン的特徴はあるにせよ、それ以外はとことんシンプル。ブルゾンタイプゆえ、構えずラフに袖を通せるのもいい。とはいえ、その佇まいはなかなかにしてエレガント。大人が袖を通すブルゾンとしては、フライトジャケットよりも、ドリズラージャケットよりもふさわしいかも知れない。