ファッションには“ハズし”や“遊び心”という概念があるが、それはあくまでセオリーや定石を知った上で成り立つこと。それを理解せずに実践すれば、それはただの“ハズレ”であり、ただの“遊び”となってしまう危険が大いにある。その違いは着こなしにちゃんと現れるのだ。中でもこんな、ワッペンで遊んだデニムジャケットはその最たるアイテムのひとつ。服の本質を知り、それをあえて崩せる実力のあるブランドから選ぶのが正解だ。ヴィンテージさながらのディテールや生地の味わいがアイテムとしての下地を支えつつ、絶妙な刺繍やワッペンワークで『ヴィンテージ風デニムジャケット』の凡庸さから回避。ツウな完成が匂う、ハイセンスな一品に仕上がっている。これならわかりやすくヒッピー的に着こなしてもいいし、それこそ綺麗目のスラックスをこのトップスで“ハズし”てもちゃんとサマになる。リテラシーの高いファッションセンスが手に入る秀作なのだ。