ファッションでもアートでも音楽でも、その道を突き詰めていくとナンセンスを楽しむという感覚に行き着くことがある。これは以前、尊敬するファッション関係のクリエーターとお話をさせてもらった時に聞いた話。それを体系的にまとめた本もあるらしい。なるほど、確かにそうかもしれない。「あえていなたさをあそぶ」とか「ダサ格好良い」とかいう考えは、昔からファッションの文脈に存在すること。意図的にそれができるようになることが、達人への道なのかもしれない。さて、NEATのデザイナーである西野大士氏が手がけるDRESSは、毎シーズンとある職種に焦点を当ててそのユニフォームを現代的に再現したコレクションを展開するブランド。この春夏のテーマは「80年代のアメリカのバーバー」だ。ほんのりフレアシルエットが懐かしいこのパンツは、ポケットがL字になっているのも象徴的。チェック柄も渋くてどこかレトロ。なのに絶妙な洗練性を保っているのは、Super120’sのウール生地を使っているからなのだろう。着眼点もデザインプロセスも着地も、まさに絶妙。なんだか“いなたい”のにすごく今っぽくて魅力的だ。自分に“似合う”とか“似合わない”ではなく、“着こなしてみたい”と思わせてくれた一本だ。