いつからだろう、クラシックなスラックスがこんな風に市民権を得るようになったのは。少し前まではスラックスはおじさんのパンツだったし、取り入れる人がいたとしても、それはファッションコンシャスな一部の人たちだけ。“あえて”取り入れているという趣が強かった。それが今やスラックスをTシャツやスニーカーに合わせて楽しむなんて当たり前。むしろ主流になりつつあると言ってもいい。価値というものは、思っているよりもあっさりと移ろうもの。既成概念に囚われていてはいけないのだ。さて、このスラックスは、そんな進化する価値観を象徴するような一本。熟練したアルチザンが手作りで洋服を作るイタリアのカルーゾに別注したもので、仕立ての素晴らしさは折り紙付。クラシックな手法で作られるアイテムでありながら、ノータック&太めのシルエットで佇まいは絶妙にモダン。裾幅をスニーカーに合わせやすいバランスで仕上げるなど、まさに現代的な着地を実現させている注目作だ。一見なんでもないように見えるスラックスだが、はけばその違いがわかるはず。クラシックでいながら現代的な既成概念を半歩超えた装いを手に入れるなら、これ以上ない絶妙な仕上がりだ。