心をスウィングさせるワイドパンツ

ジャズに魅了された高校生、宮本大が、仲間たちと共に世界一のジャズプレーヤーになる夢を追い求めていく姿を描いたアニメーション、『BLUE GIANT』が大ヒットを記録している。音楽のジャンルとしてはポップスやロックより馴染みは薄いかもしれないが、同作とこの〈MONITALY〉の「TRIPLE TUCK WIDE PANTS」を機に、是非とも一度ジャズに触れていただきたい。ジャズは20世紀初頭、黒人奴隷たちが奏でたアフリカンミュージックとヨーロッパ音楽の邂逅によりニューオリンズで生まれたとされる。その後、ルイ・アームストロングやキング・オリヴァーなどのスターが生まれ、ビッグバンドを中心にダンスミュージックとして発展。1940年代は、そんなダンスミュージックからの脱却を図ったビ・バップ=モダン・ジャズが台頭した時代であり、現代のジャズに通じる音が誕生した瞬間でもある。チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーなどはつとに有名だ。こちらのモチーフとなったのは、1940〜50年代にNYのハーレム地区で活躍していたジャズマンたちに愛されたバギーパンツ、通称“ズートパンツ”。こちらでは、当時のアイテムよりもさらにレングスを太めに設定している。とはいえ、ドレスシャツなどでよく使われる縫製法のシングルニードルにより生み出されたドレープ感はエレガントさを醸し、プレウォッシュ加工を施したことで心地よい肌触りを生み出している。その表面には、西アフリカでよく見られるバティック柄の生地からインスピレーションを得たデザインを両面プリントでのせ、さらなる高揚を煽った。足を通すことで、きっと心がスウィングすること請け合いである。