往年のプレッピーに思いを馳せて

創設者にしてデザイナーでもあり、服飾評論家でもあった石津謙介氏が1951年に設立した伝説的ブランド、VAN。これまで女性のためのものだったファッションを男性にも根付かせ、米国の有名エリート大学の学生たちが好んだスタイルをアイビールックとして国内に広めた張本人である。今や、紺ブレ、BDシャツ、ローファーといった代表的なアイテムは、メンズだけにとどまらずウィメンズにも浸透。それを考えると、ブランド、そして同氏の功績は計り知れない。特筆すべきは、当時のアメリカントラッドファッションを右から左に伝えたのではなく、日本人の体型や感性に添うようアレンジを加えて提案したことだろう。TPOなるワードを伝え、ジャンパー→スウィングトップといった言葉の言い換えも彼の発案。半ば、普通名詞化している現状を考えると、どれほど影響力を備えていたかがよく分かる。そんなVANとブランドの５周年を記念し協業したのがINSCRIRE。レタードカーディガンはそのうちのひとつで、アイビーリーガーたちが好んだ一着をゆったりめなサイジングに仕立てリラックス感と今っぽさをのぞかせた。レタードをVANのイニシャルにしたのも心憎い演出。女性にとってはメンズファッションの歴史を知るいいきっかけになり、男性にとっては女性視点からのアメトラに興味がそそられるはず。これはなかなかにして興味深いアイテムである。