100年以上の歴史の中で
目指した“オリジナル”

考えてみればコートは面白い服だ。貴族のフォーマルウェアやある地方の防寒着、ミリタリーウェア、漁師のワークウェアなど、元来の用途や必要性を終えた今でも大きなデザイン的変化を見せずファッションアイテムとして世界中で着られている。それだけ、誕生した当初から衣服としての本質をついていたからだろう。ある種、完成されたデザインゆえ新しい提案が難しいものの、さらなる進化をもたらそうと努力しているのがCASEY CASEYだ。同ブランドは、画家や陶芸家の経歴を持つイギリス人デザイナーGareth Caseyによって2008年に誕生。既存の素材やデザインの普遍性を保ちながら、ユニークさを併せ持った実験的な服作りを行っている。このBIG BLOBBY COATは、基本形は伝統的なバルマカーンコートの意匠そのものながら、極端に肩を落とした身幅の広いビッグシルエットが他のどのバルマカーンコートとも違う独自のAラインを描く。オリジナルの染め加工がもたらすヴィンテージのような質感のコットンベルベット生地は、艶のある光沢感とコットンならではの軽やかさが共存した無二の風合いだ。デザイナーは自らの服作りを「シンプルだが個性的」「ルーズだが繊細」と語る。なるほど、この一着は、100年以上と言われるバルマカーンコートの歴史の中で、確かに“オリジナル”の存在と言える。