“ナポリを見てから死ね”とは、ドイツの詩人であり、自然科学者や政治家でもあったヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの言葉。有名なこの言葉は、ナポリの美しい景色をなぞらえたものだが、同地を訪れて気づくのは、それはなにも景観ばかりではないということだ。発祥の地とされるエスプレッソや、調理技術がユネスコ無形文化遺産に登録されているピッツァは是非とも現地で味わいたいもの。そんな街は、数多くのサルトリア(仕立屋)が今なお残る職人の街としても有名だ。一説には18世紀頃、英国貴族がバカンスへ訪れては、ナポリの温暖な気候に合わせ現地で着る服を仕立てるのが常だったとか。そして、彼らの要望にそい軽く柔らかなアレンジを効かせた、今でいう“ナポリ仕立て”が定着したという。それをすぐにでも堪能したいならば、Errico Formicolaのシャツがいい。裁断は機械を使わずその道のスペシャリストが自ら行い、縫製もハンドステッチ。ナポリシャツならではの柔らかな襟の仕立てもエレガンスとリラックス感を担保する。最高級の生地で仕上げられ、他にも細部におけるこだわりはさすが職人の街出身といわんばかり。しかもこちらは、大きめに仕上げられ羽織り物としても機能する。袖を通すことで、少しでもナポリの風を感じることができるかもしれない。